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カッティングマシンを組み立てました!


 スタッフの黒助です。

 

 今回は、スタジオの引っ越しが始まってから、はや数ヶ月…ついにカッティングマシンの組み立てと動作チェックを行いました。

 

・カッティングマシンとは何か?

 カッティングマシンとは、レコードを作る際の原盤となるラッカー盤を作るための機械です。レコード盤には溝が刻まれており、その溝を針がなぞることで音を再生しますが、

この溝を刻む機械のことをカッティングマシンといいます。

 

・レコードができるまで

 組み立ての様子をお伝えする前に、レコードが作られる過程を簡単にご紹介します。


  1. ラッカー盤の作成

     まずは、マスター音源からラッカー・マスター(ラッカー録音盤)を制作します。マスター音源は、CD-Rや凝った方はアナログのマスターテープと業務用のテープレコーダーを工場に持ち込む場合もあります。

     そのマスター音源を用いて制作されるのが、ラッカー・マスター(ラッカー盤)です。ラッカー盤とは、レコードの型をつくるために円形盤にカッティングマシンで音を刻んで記録する盤のことです。アルミ素材の円盤の表面には音溝をより正確に刻むため、ラッカーという樹脂の膜が薄く張られており、音溝が刻まれていないラッカー盤の表面はツルツルしています。

     また、マスター音源などの録音済みのデータからラッカー盤を製作するのではなく、リアルタイムの演奏をミキシングコンソールから直接カッティングマシンに送り音溝を刻んでいくダイレクトカッティングという手法もあります。

 

  1. 金属マスターの作成

     音溝を切り終わったラッカー盤を使って、次はマスター盤を作ります。音溝が凹側のラッカー盤から凸側にするための作業です。ラッカー盤の表面に銀の微粒子をスプレーで噴霧して導電性を持たせ、その上にニッケルメッキを施した上で剥離させます。そうすることで音溝が凸側の金属マスター盤が完成します。これが、保存用マスター盤になるます。

 

  1. 金属マザーの作成

     金属マスター盤へさらにニッケルかクロームのメッキを施し、剥離させると、ラッカー盤と同じ凹側の音溝をもつ金属マザーができあがります。これが生産用のマスター盤

    です。


  2. スタンパーの作成

     次にスタンパーの作成します。スタンパーとは、レコード盤を製作する際に必要な音溝が凸側の盤です。金属マザーを使って製作されます。スタンパーは消耗品で、1枚からおよそ1,000〜2,000枚のレコードが製作できますが、何万枚と製作するにはスタンパー1枚では足りません。そこで同じスタンパーを作成するのに必要なのが、金属マザーです。金属マザーがなければ、また1からラッカー盤を作成しなければならず、その分手間や時間がかかってしまいます。


  3. レコードの量産 

     スタンパーをA面とB面の両面を製作したら、製盤にうつります。いわゆるプレスです。熱して柔らかくなった塩化ビニールを、A面、B面のスタンパーを上下に装着したプレス機の上に乗せ上下から力をかけてレコードを成型していきます。何トンもの力でプレスし、ある程度ビニールが冷えたらプレス機から取り出します。 プレスされた盤の一部が抜き取り検査され、問題がなければ縁のバリなど取って、レコードが完成します。



・組み立て 〜1〜

 こちらが、スタジオのカッティングマシンです。写真は、引っ越し前のものになります。

 上部の円盤は、プラッターといいます。プラッターの天面には溝がいくつもあり、側面には空気穴が空いています。これは、ラッカー盤を圧着させるためのバキュームをつける機構です。

 


 まずは、引越し後手付かずでプラッターの天面が汚れていたので、天面の上を軽く掃除をしました。

 次に、大事な工程の一つ、天面の水平を取ります。ダイヤルゲージというスピンドルの直線移動量を歯車などによって機械的に拡大して指針の回転量に変えて目盛板上で変位置を読み取る測定器を使っていきます。天面の裏に3つのネジがついており、締めたり緩めたりして調節していきます。スピーカーを設置する前にスタンドの水平を取るのと同じですね。

 この作業が組み立ての中で一番時間がかかりました。水平に近づいたと思ったら、離れを繰り返し2時間近く…ついに終わりました…!


・組み立て 〜2〜

プラッターの水平が取れたら次は、顕微鏡の移動する軌道がずれていないか専用のレコード型の盤に書いてあるガイドを置いて確認します。カッティングマシンには、カットされた(音溝を刻んだ)ラッカー盤の状態を検視するための顕微鏡がついています。

検調するためのトーンアームが天面に置いたガイドに沿って弧を描いて移動するかチェックします。

 

・組み立て 〜3〜

上部のチェック、調整を終えたら、次は実際にレコードが聴けるかアンプのチェックを行います。周波数が刻まれたレコードを使って、左右の音のバランスを確認し、調整します。問題なく、音が流れてホッとしました。

 


 実は、カッティングマシンの組み立と一緒にアンプのオペアンプを交換しました。そして、既存のものと新しく交換するオペアンプの音はどう違ってくるのかの聴き比べをしました。聴き比べに使ったのは、THE POLICEのレコード。その結果…だいぶ音の聴こえ方が変わりました!オペアンプが変わるだけでHiがよく聞こえ、輪郭がハッキリした音になったと思います。


 これで、スタジオの引っ越し後の機材の組み立ての作業が全て終わりました。あとは少しずつ細かいところを整えて、より良いスタジオになるようにしていきます。


 今回、カッティングマシンを稼働できるようにするまでの流れをレコードができる過程と共に綴りました。レコードができる過程はあくまで一般的なプレス工場で量産される流れをご紹介しましたが、アルトフォニックスタジオでは、工場プレス用のマスターラッカー盤の作成はもちろん、工場で生産するほどでは…。個人で制作してみたい。など少数枚数でのアナログレコードの制作をしたい方に向けたタブカッティング・サービスも行っております。


工場プレス用マスターラッカー盤の制作

 

少数枚数でのアナログレコードの制作

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